こんにちは。aile RUNNING CLUBビギナークラスコーチの藤井かれんです。
8月20日〜23日、山口県で「第53回全日本中学校陸上競技選手権大会」が開催されました。
男子3000mでは、福岡市立筑紫丘中学校の三原伍騎選手が8分36秒11をマークし、見事全国優勝を果たしました。

三原選手は、福岡を拠点に活動するaile RUNNING CLUBで日々、共に練習に励んでいる選手の一人です。
今回の全国優勝をきっかけに、三原選手の成長の背景や、学校と地域クラブが連携して選手を育てる環境について、月陸Onlineのコラムで取り上げていただきました。
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第72回「全中でのある選手の躍進~部活動の地域展開 ~」
執筆されたのは、山梨学院大学陸上競技部元監督の上田誠仁氏です。

実は上田氏は、aile RUNNING CLUB代表・藤井翼が山梨学院大学時代に指導を受けた恩師でもあります。
かつて一人の選手として指導を受けていた藤井代表が、今度は指導者となり、次の世代の選手を育てる立場に。
そして、その選手が全国の舞台で結果を残し、その姿をかつての恩師が記事にしてくださったことに、不思議なご縁と、陸上競技が人から人へとつながっていく面白さを感じました。
今回は、三原選手の全国優勝をきっかけに生まれたご縁と、そのそばで子どもたちの挑戦を見てきた私が感じたことをお届けします!
◆6年目を迎えたaile RUNNING CLUB
aile RUNNING CLUBは、今年で活動6年目を迎えます。
現在は福岡市内だけではなく、市外からも多くの子どもたちが練習に通っています。中には1時間以上かけて足を運んでくれている選手もいます。

住んでいる地域も学校も違う子どもたちが、同じ場所に集まり、それぞれの目標に向かって練習しています。
昨年は4名、そして今年も3名の選手が全国大会に出場しました。
今年、その中の一人として全国の舞台に立ったのが、三原伍騎選手です。
◆「きっと、この子は速くなる」
三原選手がaile RUNNING CLUBに入ってきたのは昨年のこと。
当時は、小学生から続けていた野球を辞めたばかりで、陸上競技の大会にもまだ出場したことがありませんでした。
三原選手が初めてクラブの練習に参加した時、今でも忘れられない出来事があります。
三原選手の走る姿を見ていた藤井代表が、隣にいた私にぼそっと言いました。
「いいフォームで走るから、きっと速くなる。素質があると思う。」
その時の私は、
「少し走っている姿を見ただけで、そんなことが分かるんだ」
と驚いたのを覚えています。
それから三原選手は、少しずつ記録を伸ばしていきました。

そして今年、全国大会へ。
男子3000mで、見事1位に輝きました。
◆最後の3000mでつかんだ、日本一
今回の優勝には、もう一つ特別な意味があります。
全日本中学校陸上競技選手権大会の男子3000mは、今回を最後に実施種目から外れることになりました。
これまで多くの中学生ランナーが目標としてきた全中3000m。

その歴史に幕を閉じる最後の大会で、三原選手は優勝。
昨年クラブに入ってきた時には、陸上競技の大会に出た経験すらなかった選手が、そこから記録を伸ばし続け、最後の全中3000mのチャンピオンになる。
私にとっても、とても感慨深い出来事でした。
◆全国優勝をきっかけに届いた、思いがけない連絡
三原選手の優勝後、藤井代表のもとにはたくさんのお祝いの連絡が届いていました。
その中で、藤井代表が話していた言葉が印象に残っています。
「僕は何もしていません。本人が頑張った結果です。」
指導者として練習を考え、日々選手たちと向き合っていても、実際に練習を積み重ね、苦しい場面を乗り越え、最後に勝負するのは選手本人です。
だからこそ、三原選手がつかんだ結果を、自分の指導の成果ではなく「本人が頑張った結果」と話していました。
そんなたくさんの連絡の中に、一つ、思いがけないものがありました。
山梨学院大学時代の恩師、上田誠仁氏からの連絡です。
大学卒業後も、大会会場などで年に一度あるかないか、顔を合わせれば挨拶を交わすことはあったそうですが、こうしてゆっくりと言葉を交わすのは久しぶりのことでした。
今回、三原選手の全国優勝をきっかけに、上田氏から「このことを月陸Onlineの記事にしたい」と連絡が入りました。
上田氏からの連絡は、今回の三原選手の全国優勝や、その背景にある学校と地域クラブの連携について、月陸Onlineで記事にしたいというものでした。
そして話は、三原選手のことだけではなく、藤井代表の競技人生にも広がっていきました。
藤井代表は佐久長聖高校時代、全国高校駅伝で優勝を経験し、3000m障害でも全国の舞台で結果を残しています。

一方で、山梨学院大学へ進学してからは、故障の多い4年間を過ごしました。
思うように走れない。
結果が出ない。
箱根駅伝で活躍することもできず、うまくいかない中で、監督だった上田氏とぶつかることも多かったそうです。
当時は長距離を得意としていなかった藤井代表ですが、競技を続け、現在ではマラソンを2時間24分台で走るまでになりました。

15年以上の時間を経て、会話の中で上田氏から、「長距離もやればできたんだな。その才能をうまく引き出してあげられなくて申し訳なかった」
という言葉をかけられたそうです。
藤井代表は、「いやいや、そんなことないですよ」と返したと話していました。
きっと、15年以上という時間が流れたからこそできた会話だったのではないでしょうか。
◆うまくいかなかった経験も、今につながっている
今回の出来事を振り返り、藤井代表はこんなことを話していました。
「三原の優勝がなければ、こうして自分の競技人生を振り返ることもなかったし、恩師とまた連絡を取ることもなかった。」
高校時代の華々しい結果。
そして、思うように走れなかった大学時代。
故障や悔しさ、うまくいかなかった経験。
それでも走ることをやめず、競技を続けてきたからこそ、今があります。
そして今は、その経験を指導者として次の世代へ伝えています。
「うまくいかなくても、続けること。」
結果が出た経験だけではなく、結果が出なかった時間があったからこそ、伝えられることもあるのだと思います。
◆0.03秒、0.09秒。その数字の裏にあるもの
私自身も、aile RUNNING CLUBのジュニアクラスをサポートする中で、目標に向かって頑張る中学生たちの姿を見てきました。
全国大会に出場した選手がいる一方で、全国大会への切符まで、あと0.09秒届かなかった選手もいました。

反対に、わずか0.03秒、標準記録を突破して全国への切符をつかんだ選手もいました。
たった0.09秒。
たった0.03秒。
数字だけを見れば、本当にわずかな差です。
でも、その数字の裏には、それぞれが積み重ねてきた練習があります。
うまく走れた日もあれば、思うように走れなかった日もある。
嬉しかった日も、悔しくて涙を流した日もある。
一人ひとりに違う物語があります。
全国大会への切符をつかんだ瞬間も、あと一歩届かなかった瞬間も、そばで見ていると胸が熱くなりました。
そして、改めて思ったことがありました。
結果はもちろん大切です。
でも、その結果にたどり着くまでに、どれだけ一生懸命取り組んできたのか。
その過程も同じくらい大切なのではないでしょうか。
◆走り続けた先にあるもの
三原選手がクラブに入ってきた時、1年後に全国優勝することを誰も知りませんでした。
大学時代、思うように走れなかった藤井代表も、その経験が15年以上後、指導者として次の世代を支える力になるとは思っていなかったかもしれません。
今やっていることが、すぐに結果につながるとは限りません。
うまくいかない時もあります。
頑張ったのに、目標に届かないこともあります。
それでも続けてきた経験は、決してなくなるものではなく、いつか思いもよらない形で自分自身や誰かの力になることがある。
今回の出来事を通して、そんなことを感じました。

aile RUNNING CLUBは今年で活動6年目を迎え、全国大会で活躍する選手が少しずつ増えてきたことは、クラブとしてとても嬉しいことです。
一方で、私たちが大切にしていきたいのは、結果だけではありません。
全国大会を目指す選手も、自己ベストを目指す選手も、あと一歩届かず悔しい思いをした選手も。
一人ひとりが目標に向かって挑戦する過程に寄り添い、うまくいかない時にも前を向いて続けていけるような環境をつくっていきたいと思っています。
そして、子どもたちがここで経験したことが、競技の結果だけではなく、その先の人生にもつながっていく。
そんな成長を支えられるクラブでありたいと思います。

これからもaile RUNNING CLUBは、子どもたち一人ひとりの可能性を大切にしながら、次の世代の育成に力を注いでいきます。
日々それぞれの目標に向かって頑張る子どもたちのこれからの挑戦、ぜひ応援していただけたら嬉しいです。







